さくら 満つ 月

好きなものつめこみブログ

【創作】誰がためにこの剣を。~Tales of Vesperia~  

テイルズオブヴェスペリア ユーリエステル フレンパティ
ゲームの内容のネタバレは一切ございません。
管理人の、ゲームの進捗状況が遅いため、
キャラクターの描写などが本編と合わない可能性があります。
よろしければ続きからお楽しみいただけますと幸いです。

ざわざわざわ。森の中、木々がこすれあう中を風が駆け抜ける。
風は血なまぐささをはらみ、その匂いがまた新たな魔物を引きつける。

「すごい数です・・・」
あたりを見回し、剣を構えたままのエステルが言った。
技でも、回復術でも、どちらにも対応できるように構えながら。

「さて・・・こりゃ、どっから片づけっかねえ・・・」
エステルを視界にとらえながら、彼女と少し離れた位置で、ユーリは剣を斜めに構え、
魔物の動きを目だけで捉える。
口調は軽いが、状況はいいとはいえない。四方を魔物に囲まれている。

彼らはまるで力比べをするかのようにほかのものたちを牽制し、
我先にと牙をむく機会をうかがっている。

「無闇に動いてはいけない、刺激を与えてしまったら、一網打尽にされてしまう」
と、言いながらもフレンは、ユーリとの位置関係を計算し、すこし離れて陣形を整える。

その近くで、
「どこからでも、かかってくるのじゃ!」と、
戦闘にはおおよそ似つかわしくない大きなフライパンを振り回す。
――――のは、パティ。

実際このフライパンでもって魔物を大きく担ぎあげ、
空にほうり投げてひっくりかえすのを、ユーリはさきほどから何度も目にしている。
が、如何せん隙が大きい。そこを突かれたらおしまいだ。

「パティ危ない!退がってくださ――――」
ギュっと足を踏みしめ、前に出ようとしたパティを、魔物の目が睨みつける。
エステルが声を上げた。
――――ボンっ!と大きな火炎がパティを覆い尽くす。

エステルは顔を覆ったが、次には、「どうじゃ!」と自信たっぷりの声が聞こえる。
魔物が吐いた火炎かと思いきや、それはパティがほおり投げた大きな爆弾だった。

・・・ほっ。と。息をつめながらも安心する。ほんの一瞬、ゆるんだ。
その隙を魔物が捉え、エステルの右斜めから突進してきた。
「・・・・きゃあああ!」

「―――――エステリーゼ様!」
彼女の声が耳に届くより早く、フレンはエステルの方へ駆けよろうとぎゅっと足を踏み込んだ。

瞬間、フレンの視界に黒が覆いかぶさる。
身体がそれに反応するころにはもう、彼の声が耳に響いた。

「エステル!」
声とほぼ同時に横に大きく剣が薙ぎ、魔物の体が割け、飛沫が飛んだ。

「・・・・」
ほうっ、とフレンは胸をなでおろす。
ユーリは地面に向けて剣をさっと振り、魔物の飛沫を落とす。剣が錆びてしまうからだ。

「・・・だいじょぶか、エステル」
立てるな?と、目で問い、彼女は はいと小さく頷く。
「ありがとうございます、ユーリ」

「・・・・」
その、光景が、声が、フレンには少し、遠い。

戦場での僅かな差、それは雲泥の差 だ。

身につけている鎧のせいにはしない。速さで、彼に敵わないのだ。
護るべきものが同じだからこそ。強くそう思う。
ふ、と、黒髪の横顔に目を向ける。


「――――っフレン! 余所見 してんじゃねえ!」
はっ、とする。横からユーリの硬く勢いのある声が飛んだ。
(しまった・・・!)

「――――出たとこ勝負じゃ、リスキー・・・・――――」
すぐ前方にいたパティが、一匹残った大きな鳥の魔物と対峙していた。

パティの頭上を大きな影が覆っている。
地面から発生する魔術で動きを止めようとしたのだが、術の詠唱が間に合わない。
嘴をパティのほうにむけてきたかと思うと、その幅広い翼で彼女の小さな身体を叩いた。

「あう・・・っ!」
「パティ!」エステルは悲鳴に近い声を上げた。
だめだ。目を覆っている時間があるなら、彼女に癒しの術を―――。

「・・・・っ!」パティは自分の背中で、息をのむ音を聞いた。
背中を襲うはずだった衝撃はなく、かわりに自分を支え抱きとめる、腕。
きらり、と。薄暗い中でさえ映える、金色(こんじき)。

「・・・・フレン」パティは彼の名をポツリと漏らす。
大きな衝撃こそ避けられたものの、鳥のはためきのダメージはあったはずだ。
フレンはすっ、とパティから目を逸らした。


「ったく。あっちもこっちも守りきろうなんて、無茶すんな。フレン」
幼馴染はさも軽く言う。真摯な目をユーリに向け、しかし心の中で苦笑する。

無茶は どっちだ、と。
しかも彼はいつも、その無茶を、難なくやりとげようとするのだから。

「大丈夫かい、パティ」ふわりとパティの前髪に触れ、撫でた。
フレンはそれから、パティの擦りむいた膝小僧に癒しの術をかけ、
そのまま彼女の周りに緑色の光で円陣を描く。

「守護―――方陣」

パティはすぐにその術の効果を理解する。
傷を癒し、かつ術をかけたものに魔物が近寄るとダメージを与える、攻防一体の技だ。

「フレン!」

うちはまだ戦える!と、パティは叫んだ。

「此処から、出ちゃ」

――――だめだよ。

フレンは緊張を含んだ声で言い。
安心させるように笑んだ。

パティはわずかにその海色の瞳を揺らし、ややあってくやしそうに下を向いて唇をかんだ。

「・・・いい子だ」


「さぁて。最後だ。飛ばして・・・―――行きますか」
ユーリはくるくるっと剣を回す。戦意を高揚させるときの、彼の癖だ。
フレンはすっ、と剣を正面に構え、前を見据える。
「ああ!」


瞬間。二人が地面を蹴って飛びあがる。
薄暗い森のなかに、黒は溶け、金色がちかと瞬いた。





*あとがき*

少し前から書いていて置いておいたお話をアップです。
推敲したわけではなく、ただ止まっていただけなのですが^^

カップリングとしては、ユーリ&エステル よりも、フレン&パティです。
本編が進んでいないため、本編に準拠したお話がまだ書けませんが。
この2人が好きになりたくてしょうがない。だってなんかかわいいじゃないですか。
パティちっちゃいし、フレンが兄のような(おい 

あとがきで補足するってことは本編で上手く表せてないってことのあらわれでしょうね。(嗚呼・・・)

書きたかったのは、フレンがエステルを庇おうとして、否応なしにユーリと差を感じてしまうとか、
守護方陣をパティにかけるときのフレンのせりふでした。

いい子だ、は、ユーリがちいさな子によく言うのが(映画でもゲームでも)好きなのですが。
フレンはちょっと違うのかも。すみません。

戦闘シーンだけじゃなくて、日常を切り取ったお話を書いてみたいものです。
でもやっぱり、“誰かを守ろうとする”姿はとても好きだったり。

update: 2011.1.3
written by halka
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